ページの先頭です

このページは、ホームの中の食事と介護の中の中村育子栄養士の訪問栄養指導レポートの中の中村育子栄養士の訪問栄養指導レポート(4)のページです。

中村育子栄養士の訪問栄養指導レポート中村育子栄養士の訪問栄養指導レポート

在宅訪問栄養指導の課題と今後について考えてみました。

在宅訪問栄養食事指導の話も今回が最終回です。私は全国在宅訪問栄養食事指導研究会(訪栄研)の代表を務めており、実際に毎日訪問している実践者です。在宅訪問栄養食事指導を1人でも多くの方に知ってもらって、サービスを使ってもらい、広めたいと思っていましたので、このページで沢山の話ができたことをうれしく思います。

在宅訪問栄養食時指導の課題

在宅訪問栄養食事指導の課題というのは、このサービスが全国的に広まらないところにあります。訪問看護ステーションの訪問看護師や訪問リハビリの理学療法士や作業療法士と同様に、通院困難で何らかの病気によって、在宅で食事療法が必要な人には、管理栄養士の栄養指導が在宅で受けられるサービスなので、とても良いサービスだと思います。

医療保険でも介護保険でも受けられます。料金も1割負担で530円ですので、高額な訳でもありません。ではなぜ広まらないかというと、在宅で訪問栄養食事指導を行う管理栄養士というのが、もともといないからという事もあります。管理栄養士は通常、病院・施設・事業所など喫食者が多く、栄養管理が必要なところでは設置基準により必ずいます。在宅訪問栄養食事指導を行う管理栄養士は医療機関(病院・クリニック・診療所)でないと現在算定できませんが、このうち入院施設を持たないクリニック、診療所では管理栄養士の設置基準がないので、管理栄養士を雇用していないところが多いのです。病院では病棟、外来の栄養管理と給食管理業務があるので、とても在宅まで訪問できません。

私の所属している医療法人社団福寿会福岡クリニック在宅部では、在宅診療を始めた当初から理事長が、在宅患者の栄養管理に問題がある事に気付き、入院施設を持たないクリニックに在宅訪問栄養食事指導を行う管理栄養士を常勤で雇ってくれたので、私は毎日訪問に行く事ができるのです。このような管理栄養士の雇用を、国がもう少しバックアップして、クリニック・診療所に管理栄養士の設置基準があればと思います。

このままでは医療機関からしか算定できないものの、訪問する管理栄養士がいないまま、在宅訪問栄養食事指導を行う管理栄養士は増えず、訪問してほしい患者様がいても希望が叶わないのです。現在ではこのクリニック・診療所と契約して訪問に行く管理栄養士も少し増えました。

これからの在宅訪問栄養指導

ではこれからの在宅訪問栄養食事指導はどうなるのでしょうか。訪栄研では管理栄養士の教育に関して、今年の3月から、日本栄養士会特定分野認定制度「在宅訪問管理栄養士」研修を担当しています。在宅に出ていく管理栄養士を教育の面でバックアップしているのです。雇用の面では現在、薬局での管理栄養士の雇用が増えています。薬局では薬剤師の居宅療養管理指導(在宅薬剤指導)が行われていますが、将来は管理栄養士も薬局から在宅訪問栄養指導を行える可能性があるため、薬局での雇用に繋がっているのです。薬局に訪問してくれる管理栄養士がいれば、訪問栄養食事指導を頼みたい人は探さなくてもよくなります。また国も訪問できる管理栄養士が増え、栄養改善により患者様のQOLが向上すれば、算定要件を見直してくれ、さらに訪問しやすい環境が整うと思います。
私個人の意見としては管理栄養士単体のステーションよりも、薬局や他職種共同の医療機関の在宅部から訪問に出た方が、色々な情報交換や連携が取れて良いと思います。私の職場は在宅部ですので、色々な職種とお昼ごはんやおやつを食べながら、情報交換ができます。その中で自分の栄養指導の方向性を確認する事ができ、なおかつコミュニケーションも取れます。

もう1つ問題なのは管理栄養士自身の問題です。管理栄養士の養成機関である大学では病院、学校、事業所、施設、保健所等の実習や教育は行いますが、学生は在宅という方向があるという事が分かりません。私は1年に1度、母校で在宅訪問栄養食事指導の講義を行っていますが、その時初めて学生は在宅という事について知るので、もっと学生のうちから在宅について教育すべきなのです。
また、多職種連携も他学部と一緒にディスカッション等を通して、学生のうちから習慣化させておけば意識して連携しなくても自然とできるようになるのです。
私の職場の福岡クリニック在宅部では、1人1人の専門職が在宅患者様に対して地道な努力をしています。それが患者様の改善に貢献し、自信が生まれるのです。寒い冬の雨の日や雪の日でも、我々は全員外に出て、患者様の家に向かい診療、看護、リハビリ、栄養指導、相談を行います。必要があれば関係職種に連絡や相談し、在宅で生活している患者様を支援しているのです。それが、在宅部の強い結束に結びついています。このような医療機関での在宅部という部署がもっと多くの地域で出来る事を望みます。

日本栄養士会の取り組み

日本栄養士会では都道府県に栄養ケアステーションを設置しています。ここでは企業やクリニック・診療所からの求人を登録している栄養士・管理栄養士に紹介していますが、都道府県に1つでは認知度も向上しません。せめて市町村に1つはあり、しかも駅前や役所など行きやすい所にあって目立つ存在になってほしいものです。目立つといえば東京スカイツリーに栄養ケアステーションを置いてくれれば、利用するしないにかかわらず、認知度は急上昇するでしょう。

これからの在宅介護

これから日本はもっと少子高齢化が進みます。現在でも在宅の介護力はとても低いと感じます。それは介護者とされる家族が療養者を介護できない場合が増えているからです。家族構成も独居や高齢者世帯がとても多く、病院から患者様が帰ってくる場合でも、人口肛門、人工呼吸、在宅酸素、吸引、胃瘻、食形態などケアの複雑さに介護者がノイローゼや大きなストレスを抱え、心身共に負担が大きくなり、患者様の在宅生活が困難になる場合があるのです。日本の介護保険制度は介護者に対してとても厳しく、介護者なのだから介護して当然のように見受けられます。私達管理栄養士は、そんな介護者の側に立ち、介護軽減となるような支援を行います。病院では栄養管理は非常に厳密に行いますが、在宅で行いやすい栄養管理の方法を1件ずつ本人・介護者と一緒に模索し、簡単に作れる治療食や介護食の相談に応じます。よく栄養指導というと名前を聞いただけで嫌がる人もいますが、在宅診療を受けている患者様の栄養問題で困っている方がいらっしゃったら、1度ご相談ください。栄養の問題は放っておいても良くなる訳ではなく、時間が経てば経つほど状態は悪くなり、低栄養・褥瘡・貧血・合併症・過栄養による高度肥満等、改善するのに時間がかかります。1人でも多くの在宅患者様の栄養問題が解決し、QOLが改善されることを願っています。

前のページへ1234



ページの終わりです