摂食嚥下障害の原因や症状、
分類は?

摂食嚥下障害の原因、疑われる症状

摂食嚥下障害の多くは、飲食物を口腔から咽頭、食道を経て胃へ運ぶ過程のどこかに問題が起こることで生じます。
原因は代表的なものである脳卒中のほか、口腔内の腫瘍、食道炎、神経疾患、認知症などさまざまで、嚥下に関係する組織や器官の構造に問題がある「器質的原因」、動きに問題のある「機能的原因」、精神的な要因で生じる「心理的原因」に大別されます1)

  • 摂食嚥下障害に気づくための口腔機能自己チェックシート。
  • 口腔機能を確認するときは、厚生労働省「介護予防マニュアル第4版」にまとめられている「口腔機能自己チェックシート」が参考になります。

    ただし、患者さん本人に自覚症状がないケースがある点に注意が必要です。肺炎を繰り返し、検査によって誤嚥を認めて摂食嚥下障害と気づくこともあります2)

    とくに自分の歯または入れ歯で左右の奥歯をしっかりとかみしめられない方は、口腔機能低下の可能性が高く注意が必要です。
    • 1)
      藤島一郎:嚥下障害リハビリテーション入門I 嚥下障害入門. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine. 2013; 50(3); 202-211.
    • 2)
      藤島一郎:嚥下障害の機序と治療,リハビリテーション. 日老医誌. 2000; 37: 661-665.

摂食嚥下障害の治療

摂食嚥下障害への治療として、薬剤による治療や手術、摂食嚥下訓練などが行われます。そのうち主要な役割を担うのが摂食嚥下訓練です3)
訓練の方法は、飲食物を用いない基礎的訓練である「間接訓練」と、飲食物を用いる「直接訓練」があります。
直接訓練は誤嚥の危険を伴うものの効果はあがりやすく、嚥下造影検査(VF)を行って、誤嚥や咽頭残留の少ない体位・姿勢、 食形態、食べさせ方などを検討していきます4)

  • 摂食嚥下障害に対する訓練のポイント

    1. 理学的所見、神経学的所見、嚥下造影検査(VF)などで、摂食嚥下機能を評価し、いくつかの問題点に対して目標を絞り、間接訓練を行う。
    2. 的確なリスク管理を行う。
    3. チームアプローチで進める。
    4. VFで著しい誤嚥のない条件を確認し、摂食を開始する(直接訓練)。
  • 摂食嚥下障害訓練の考え方

    飲食物を用いない間接訓練、飲食物を用いる直接訓練、それぞれの摂食嚥下障害訓練の考え方。
  • 3)
    兵頭政光:嚥下障害診療ガイドラインの概要と活用法. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報. 2021; 124(12): 1584-1589.
  • 4)
    才藤栄一:摂食・嚥下障害の治療戦略. リハビリテーション医学. 2004; 41(6): 404-408.
なるほど、段階によって訓練の方法が変わるんですね。
患者さんに安全に食事を楽しんでもらえるよう、適切な評価・訓練を行っていきましょう。

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