褥瘡(床ずれ)を防ぐ
栄養ケアってなに?

褥瘡の危険因子とは

高齢化に伴って寝たきり状態の高齢者が増加しており、褥瘡の予防・治療が重要な課題となっています。褥瘡の発生には、寝たきりによる皮膚の圧迫・軟部組織のずれといった物理的要因のほか、加齢、基礎疾患の持続、低栄養など、さまざまな要因が関与しているといわれています1)。日常生活自立度が低下し、寝たきり状態になることで、褥瘡発生の危険度が高まります。

褥瘡の要因は寝たきりだけじゃないんですね。

褥瘡対策は入院基本料の算定要件に組み込まれており、厚生労働省が提示する危険因子評価票2)が用いられています。 褥瘡の危険因子には以下の項目が挙げられており、「あり」「できない」に該当した項目があった場合、褥瘡対策に向けた適切な看護計画を立案・実施します。

  • 厚労省が提示する、褥瘡に関する危険因子評価表。
  • 該当する項目があった場合、褥瘡対策をしっかり行います。
  • 基本的動作能力

    ベッドの上での自力体位変換、椅子上での座位姿勢保持、除圧が困難になります。体圧分散マットレスや車椅子を用いた生活面でのサポートが必要になります。
  • 病的骨突出

    仙骨部、尾骨部などの部位が突出しているため、褥瘡リスクが高まります。圧分散マットレスを用いて仙骨や尾骨の圧迫を防ぐことや、ずれを防止する福祉用具を用いることが対策として挙げられます。
  • 関節拘縮

    四肢関節の可動域制限や股関節・膝関節の屈曲拘縮が起こると、関節の可動域が制限されるため日常動作が困難になります。関節の可動域を徐々に広げる運動(リハビリテーション)を行う必要があります。
  • 栄養状態の低下

    血清アルブミン値が低下したり、貧血になったり、皮下脂肪が減少したりすると、低栄養状態となり褥瘡が発生しやすくなってしまいます。必須栄養素の補給など、適切な栄養療法を行う必要があります。
  • 皮膚湿潤

    多汗、尿失禁、便失禁の刺激で皮膚が脆弱になり、損傷を受けやすくなります。洗浄を行い皮膚への刺激物・感染源を取り除くことや、おむつをこまめに交換し清潔を保つことが必要になります。
  • 皮膚脆弱性

    栄養状態の低下による浮腫、スキン-テア(物理的な摩擦やずれなどで生じる皮膚裂傷)の保有により、皮膚が脆弱になり外力による損傷を受けやすくなります。皮膚の保湿やドレッシング材を用いた皮膚の保護を行う必要があります。

褥瘡の栄養管理

褥瘡の発生要因のうち、低栄養の予防については「褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版」3)のなかで褥瘡発生予防・発生後の全身管理における栄養管理の必要性が記載されています。
実際に急性期の高齢患者を対象にした研究では、栄養補助食品を1日200 kcal、15日間追加した場合、対照群と比較して褥瘡発生が少なかったことが報告されています4)。褥瘡の治癒時は少なくともエネルギー30kcal/kg/日以上、たんぱく質1.0/kg/日以上が必要と考えられています3)。また、特定の栄養素(亜鉛、アルギニン、コラーゲン加水分解物等)は十分なエネルギーとたんぱく質・ビタミンを摂取したうえで補給するのがよいでしょう。

  • 3)
    一般社団法人 日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版」
  • 4)
    Bourdel-Marchasson I, Barateau M, Rondeau V, et al: A multi-center trial of the effects of oral nutritional supplementation in critically ill older inpatients. GAGE Group. Groupe Aquitain Geriatrique dçEvaluation. Nutrition 2000 Jan;16(1):1-5.
発生原因を正確に突き止め、適切な介護計画を立案・実施することで、褥瘡の予防・治療を目指しましょう。患者さん一人ひとりの栄養状態を正しく評価し、適切な栄養療法を実施することも大切です。

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